2008年5月16日金曜日

第三課題  林檎のイメージによる立体

趣旨:
 イメージの表し方の質を高めることによって脳を鍛え、深く豊かに生きる
ということは、資源消費の少なかった太古から何らかのかたちで行われて
きましたが、創意工夫された造形は人を考えさせ様々な連想を呼び起こし
ます。


課題: 各自がとらえた林檎のイメージを何らかのかたちで深化・発展さ
せた立体作品をつくる。 副題があってもよい。

提出物:
    広さが27.5cm×27.5cmの台座の上に
   体積の合計が13.75cm立方相当の立体物を据えたもの。

  55cm立方相当の内容を凝縮したような濃さ(深さ)があること。
  台座の表面も意匠のうちなので十分効果的に配慮のこと。


出題日: 5月7日
提出日: 5月14日 13:30
講評日: 5月21日
出題者: 箕原真

1X07A162 堀越理沙 A+++







都市の中に泡のようなものが沢山浮いている。または降ってきている場面と、道路面に水が溜まっている場面の絵だが、単に絵が凄くうまいだけでなく、絵をかなり操作して、シュールなイメージを醸し出しており秀逸である。(箕原)

1G06D801 馬場 雅博 A+++





1枚目、京都鴨川のながめ、京都は日本の都市の中ではめずらしく「老いた都市」の雰囲気を持つ。そのよどんだ空気の堆積の濃度と、それからポッカリと浮かび上がった心情でそれを眺めている作者の姿が目に浮かぶ。地下鉄の心斎橋駅のヴォールト天井の気積の豊かさの、何と言う虚しさか…。
(池村)

1X07A122 タムラタダシ A+++





黒い切り絵のみによる精緻な表現。切り刻まれた日常の風景は、最後は宇宙へとつながっていく。切り絵によって、シャープな表現であるだけでなく、細部を捨象した力強い表現が実現している。(池村)

1X07A045 坂本浩気 A++







暗い郊外の夜。危険な匂いすら感じない。実にあっけらかんとした空虚。誰の為でもなくぼんやりと白く浮かぶ道路の白線。実に白々しい空虚な世界が広がっている。(池村)

1X07A138 NISHIDA YUICHI A++







ほとんど車の停まっていない駐車場。車の停まらない駐車場ほど虚しい空間はないだろう。機能しかない空間が機能を果たしていない虚しさである。駐車場は都市の縮図かもしれない。そこにあらためて、詩情を見い出すことは可能なのだろうか。(池村)

1X07A107 タカハシコスモ A++







谷川俊太郎の「かなしみ」の詩の一節が主選である。避雷針、煙突とそれ、塀の土の金鋼の支柱の列、そし架線へと対電が描かれていく。先端に、戻りようもできない、空へと消失するしかない尖端に、「かなしみ」を感じるのは正しい。繊細なタッチがそれを確かめてくれているように思う。(入江)

1X07A007 荒川千晶 A++





東京都内の駅を、黄、赤、青の単色だけで描いている。人気のない駅の風景は、どこか孤独感を感じてしまう。最後に全色をつかって描かれた駅のシーンは、現実の世界であろうか、または、夢の世界であろうか。日常の風景の中に空虚を見つけ出し。細部にわたって描いているところは好感がもてる。
(日置)

1X07A019 TAKUMA ITO A++







丁寧にマスキングして、エアーブラシで吹き付けることで描いてきている。輪郭を消去した立体感と、シックで大人っぽい色使いにより、独特の個性ある絵となることに成功している。
(箕原)

1X07A015 CHIAKI ISHII A++







ディズニーランドの施設がアッセンブリッジして表現されている。時計塔、王城等、非日常の転換装置に人々は集まり、一時の日常から遊離した世界に溺れる。都市の生活に鬱積したアクのようなもののガス抜きのように、ミッキマウス風船が空に舞い上がる。シニカルに構えているようで、都市の中でも手把みできるように実感できる虚体なのかもしれない。丁寧に描き込んでいる力である。(入江)

1X07A031 及川輝 A++







ひとり暮らしのの殺伐とした生活が、描かれている。どのシーンにも空が青くぬられている。空とそれ以外の風景の対比が都市の空虚感を引き出している。中央に描かれた携帯電話の電波状況は、何か意図的なメッセージであるのかもしれないが、あまりに唐突な感じがする。学生生活に少し疲れた感覚があるのだろうか、前向きに進んでほしいものである。(日置)

1X07A186 横田圭洋 A++







安田生命ビルが空き地のように立ち上がる。その下に人々の生活がある。眼に輝きが感じられない。午後過ぎた車内に一人、光が溢れる。遥か彼方のビルの間に陽が沈んでいく。夕陽の光が溢れる様、豊かに実りある様に都市の人々の光景が空虚に感じられてくる論理。黒幼く塗りつぶすように描くタッチが、存在感を強めている。(入江)

1X07A114 竹花洋子 A++







鉄橋からの夜景であろうか、車しか走らない大きな道路に都市の無機的な雰囲気が伝わってくる。パステルのような表現が全体の印象をうまく特徴づけている。するどい構図で描ききっているところがすばらしい。車が光のみで描かれているがどこか、生命感を感じてしまう。描かなくても良かったかもしれない。ヨーロッパの空港にひとりで到着したときの感覚と似ていると感じるのは私だけであろうか。(日置)

1X07A097 白石佳織 A++







夕暮れ時の薄ぼんやりとした風景に都市のなかの空虚感を見出している。鉛筆描きに、水彩の様々な色合いが滲んだ様は美しく、暗闇のやわらかい風情を伝えている。(箕原)

2008年5月14日水曜日

第二課題 都市の中の空虚

都市は膨大な人々の生活を飲み込み、複雑に絡みあった組織体として存在している。
その複雑さを単純化して理解することなど不可能だろう。
なによりもまず、我々自身がその中にすでに取り込まれているのであって、
その組織体の細胞なのだ。
学業、労働、消費といった活動も、我々の住居も、学校も職場も、バスも電車も、
道路も車も、全てが都市を形成する微細な細胞である。

そんな生活の中で、ポッカリと、自分だけがこの巨大な渦の中から離脱したような感覚に襲われたことはないだろうか。そんな感覚を思い起こしてほしい。
そして、そのような感覚にとらわれた場所を再発見してほしい。

そのような感覚にとらわれたことのない人は、そのような感覚を呼び起こす場所を見つ出してほしい。

自ら懐いたその感覚が伝わるように、その「場所」を克明に描くことが今回の課題である。
社会的機能や意味を超越して、その「場所」が発しているauraが、
濃密に感じられるような作品を描き出して欲しい。

出題者:池村

提出物:手で克明に描いたドローイング、規定用紙(275×275mm)4枚以上
    (表紙含めず。ただし表紙は必ず付けること。)



出題:2008年4月23日
提出:2008年5月7日
講評:2008年5月14日

A1GO6D801 馬場雅博 A+++







スリットから射し込んだ光、あるいは周囲の風景が、箱の内部で淡い色調とともに薄らと混ざり込む。比較的単純な構成によって複雑に曖昧で映像的な世界を醸し出している。(箕原)

1X07A080 斉藤亜紀子 A++







横側に開けられた、瞳にとってほとんど見えるか、見えないかぐらいの小さな穴から覗くと、ぼんやりとピンク色が見える理由は分かるのだが、それに滲んで緑や青が見えるのが一瞬、不思議に思う。露出されている構造を見て始めて、内部の反射のみによる光の効果が理解できる。(箕原)